自己満上等ォォォ!!








視界にじわりと涙が滲んだとき、頭上からため息が降ってきた。

そして目の前に突きつけられた剣が、引かれた。


変わりにスペインの手が伸びてきて、私を起き上がらせた。





私は呆然とスペインの動きを目で追った。

スペインは剣を納めると、私を見下ろして唐突に口を開いた。





「正座」

「…え?」

「ええから、そこに正座しいや」




スペインの声が怒りを含んだものだったので、私は彼の意図が読めないまま、いそいそと体を起こしその場に正座をした。


小さい頃、よくこうやって怒られたことを思い出すと、頬が緩みそうになった。

すると頭上から噴出すような声が聞こえて、私はスペインを見上げた。

スペインは片手を口にあてて、笑ったことを誤魔化そうとしているみたいだったけど、肩が小刻みに震えているために効果はなかった。

それがおかしくて笑ってしまうと、笑うんやないと小さく頭を小突かれた。

よかった、私の知ってるスペインだ。







絶縁状態にまで陥った兄と妹がこんなに楽しい気持ちでいられるなんて想像できなかった。

スペインの魔法だなーなんて思う。






「言いたいことはぎょうさんあんねんけど…」




昔からスペインのお説教はこの台詞から始まる。

私は正座、スペインは腕を組んで仁王立ち。




「まず、俺を負かそうなんてン千年早いわアホ!」

「…すみませんでした。…勝てると思ったのに」

「オイ、聞こえとるで」





聞こえるように言ったんだもん。


それにしても私に偉そうに説教するこの男。

…今、剣ぶっ刺せば勝てそう。





!ちゃんと聞いとんの?」

「はいはい聞いてますよ」




昔からそうやけど、信用できへんわ〜とかぼやくスペイン。

いいや、今回はおとなしく負けたるわ。





「それから宣戦布告の理由やけどな、ロマーノから聞いとるで」

「え!」

「え、やない。余計なこと考えるロマーノもロマーノやけど、やで」

「いつから!?いつから知ってたの!?」

「昨日やアホ」




昨日かいアホ。


…って言うかロマーノ。

言うなって言ったのに。

地面にロマーノの顔を思い浮かべて、そのロマーノに向かって文句を言う。

あんたなんか指でぐりぐりしてやる。


指で土をぐりぐりしてるときだった。












優しい声で名前を呼ばれて顔を上げると、スペインが向かい合ってしゃがんでいる。

返事をしようと口を開くと、突然スペインに抱きしめられた。





「…ス、スススペイン?!」

「ありがとうな、。俺のこと心配してくれたんやろ?」




スペインの声が耳元で聞こえる。

こんなことされるのは何百年単位も昔のことで、もうどうしたらいいのかわからない。

でも、スペイン…






「…許してくれるの?」





勇気を振り絞って聞いてみる。

また兄と妹に戻れますか、私達。

変わらずに好きでいていいですか。

好きでいてくれますか。




スペインが私を引き離してにっこりと笑った。

ああ、これは期待してもいいのかも…






「許さへん」

「え!?」





予想外の展開に、私はショックを受けるより大混乱。

にっこりと笑うスペインが何を考えているのかまったくわからない。


でも少なくても嫌悪感は抱かれてなさそう。




「あの、それは…どういう…」

「言うたやろ、もう妹とは思わへんて」





その言葉がぐさりと心に突き刺さった。

にこにこ笑ったままのスペイン。


ああ、やっぱり元には戻れないのか…






「せやからもこれからは、俺を一人の男として見てな」




……は?




「いやもう、ほんま良かったわ。兄妹のままやと近親相姦やし?」

「そやかて妹として見るんは、正直もう限界やったし?」




………は?





「はあああッ?!」

「それにしても、ほんまいい女になってしもうて…」





上から下までじろじろ見られて顔が熱くなった。





「へ、変態!」

「なんや今更。一緒に風呂も入ったやん」

「な、何百年も前の話を持ち出さないでよ!」






一発ぶん殴ってやろうと思って振りかぶった拳は、あっさりスペインにつかまった。

にやりと人の悪そうな笑みを浮かべるスペイン。

離してよ!と腕を振り回しても、一向にふりほどけない。






「せや、賠償の話やけど…」






私の腕を掴んだまま、急にまじめな顔で真面目な話を始めたスペインに、思わず腕を振り回すのをやめた。


正直、うちもそんなにお金の余裕はない。

めちゃくちゃな金額を突きつけられたらどうしよう。





「お金はいらへん」

「え、本当?!あ、ありがとスペ…」

「せやけど、は俺のもんやで」

「うん、わか…?!」

「よっしゃ、これでスペイン領や」

にやりと笑うスペイン。





「えー!?」





掴まったままだった腕を引っ張られて、いとも簡単に肩に担がれる。

じたばたと暴れるが、びくともしない。

スペインはすたすたと歩き始める。





「もーほんまにの独立を許してから、何度後悔したかわからへんわー」

「は、離してよ!お金払うから!」

「断る。もう俺のもんや」






スペインは暴れる私をうまく押さえ込んで、器用に唇にキスをしてみせた。














兄妹に咲くハイビスカス。
(へ、変態ーッ!!!!) (アホ、それはフランスや)













*あとがき









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