自己満上等ォォォ!!
「何…これ」
建物から一歩外へ出て言葉を失った。
本陣を守っていたはずの兵士達が皆一まとめに縛られていた。
門番も、伝令も、みんな。
口には布で轡がされていて、私を見るなりそれぞれ唸りながらばたばたともがき出した。
呆然とその塊を見ていると、視界のはじの木の下で何かが動いた。
見ればスペインが立ち上がって気持ち良さそうに伸びをしているところだった。
驚いて言葉もでない私を見ると、いたずらが成功した子供のような顔で笑った。
「おはようさん。相変わらずネボスケやな」
「…何してるの」
「ん、伸び」
どこかで似たような会話を交わしたなと思いながらスペインを睨み付ける。
するとスペインは肩をすくめて苦く笑う。
「最近よう睨まれるなぁ」
「…ふざけないでよ」
「別にふざけてへんで」
「なんのつもり?まさかわざわざこんな所まで伸びしにきたわけじゃないでしょうね?」
「お前本当おもろいなぁ」
ぶっと吹き出されて、頭にきた。
すると珍しく空気が読めたのか、スペインは急に真面目な顔になった。
「…宣戦布告の理由、俺に話してくれへんの?」
まっすぐに私の目を見つめるスペイン。
その目には穏やかな光りが宿っている。
だけど同時にどこか嘘は許さないというような鋭さも兼ね備えているように見えた。
心が震えた。
ダメだ、やっぱり私はこの人が好きだ。
でも。
私はなんの前触れもなく剣を抜くと、スペインに斬りかかった。
スペインもすばやく剣を抜いて「うわ」とか言いながら受けとめた。
金属のぶつかり合う音がして、そのままギリギリと組み合った。
私は女、スペインは男。
長引けば押し勝たれるのはわかりきっていた。
一度スペインの剣を払って、間合いを取る。
「乱暴な妹やなぁ…」
スペインのその言葉に、心臓に痛みが走った。
ひとつ大きく息を吸うと、私は声を張り上げた。
「…いい加減兄貴ぶるのやめてよ!」
私の言葉にスペインの目が見開かれるのを見た。
「スペインと南イタリアを植民地にしたいの!何回言えばわかるの?!」
嘘だよ
「もう育ててもらった頃の私じゃないし、」
こんなの嘘だからね
「もう兄だなんて思ってない!」
嘘だからね、スペイン。
ふと、頭上に影が落ちているのに気づいた。
見ればスペインが剣を振り下ろしてきたので、慌てて受けた。
剣が組み合うと、火花が散った。
再びお互いの剣を剣で押し合う。
起こった風が、私の髪も、スペインの短いふわふわのくせっ毛も揺らした。
これが、初めてのスペインからの攻撃だった。
その事実がショックだった。
自分は散々斬りかかったくせに。
急に手にすごい衝撃が走った。
そう思ったのも束の間、私の手から剣が弾かれて飛んでいった。
私はその反動で後ろに飛ばされ、後頭部を思いっきり打った。
頭の中に広がる衝撃に、吐き気がした。
痛む頭を抑えながら立ち上がろうとすると、目の前に剣が突きつけられた。
ゆっくりと見上げると、冷たい目をしたスペインが私を見下ろしていた。
その瞳の冷たさに、背筋がぞくりとした。
こめかみを汗が伝う。
こんなスペイン初めて見た。怖い。
少し離れたところに、私の手から弾かれた剣が突き刺さった。
「もう兄やと思ってへんて?」
「スペイ…」
「そりゃ好都合や」
「俺かてもうお前を妹とは思いたない」
体から力が抜けた。
起こしかけていた体が、ぱたりと地面に倒れた。
晴れ渡る空が、憎かった。
スペインに、嫌われた。
自分から戦争を仕掛けたのだ、覚悟はしていたつもりだった。
だけど甘かった。
この人に嫌われるのは、こんなに痛いことだったんだ。
もう痛すぎて、どこが痛いのかわからない。
「…俺の勝ち、やな」
おまけに戦争にも負けた。
それはロマーノの願いも叶わなかったという宣告。
こんなに簡単にも負けてしまうなんて。
昨日まであんなに優勢だったのに。
今まで、スペインはちっとも本気じゃなかったんだ…
ああ、涙が出そう。
頭がガンガンする。
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