自己満上等ォォォ!!
看守に止められるのも聞かず、階段を駆け昇った。
信じられなかった。信じたくなかった。何かの間違いであってくれと願った。
鉄の扉に駆け寄り、備え付けられた鉄格子のついた小さな窓から中を覗き込んだ。
頼む、何かの間違いであってくれ!
しかしはそこにいた。
冷たい石の床に膝をつき、月の光を浴びて静かに祈りを捧げていた。
うつむき加減のその横顔は安らかで物静かで、月光に照らされて青白く儚く見えた。
一瞬息をするのも忘れたが、我に返って必死になって扉を叩いた。
「!」
「…イギリス!?」
は扉の向こうにいるのが俺だと気づくと立ち上がり、駆け寄ってきた。
「…!」
「ああイギリス…!本当にイギリスなのね」
の頬を涙が伝う。
こんなに近くにいるのに、扉に邪魔されてそれをぬぐってやることもできない。
「何があったんだ?!どうしてお前がここにいるんだ!」
「…お父様ははめられたのよ」
「な…」
「民衆からの絶大な支持を、貴族たちに妬まれたの…」
ありもしない疑惑をかけられたの。
は悔しそうに唇を噛んで、目を伏せた。
「…待ってろ、俺が女王にかけあって!」
「無理よイギリス!」
踵を返そうとした俺を、の声が引きとめた。
「無理じゃない!お前らに罪は無いんだ!」
「…あなたをたぶらかして権力を掌握しようとしてる」
「え…」
「そういうことになってるの。女王様もそう思ってらっしゃるわ」
「そんな馬鹿な…」
「極悪親子なのよ…生きてここを出られないわ」
そう言っては苦しそうに笑った。
遠くで看守の声が聞こえる。俺を追ってきたんだろう。
にも聞こえたらしく、ぽつりと呟いた。
「それに私はどっちにしても死刑だわ…」
「何でだよ…!」
「私あなたを愛してしまっているもの」
「!」
「国との恋は重罪なのよね?それなら助からないわ」
あなたを好きな気持ちを否定してまで助かりたくないの。例え嘘であっても。
あまりのことに俺は何も言えずに、ただ扉の窓にしがみついていた。
伝えたいことはたくさんあると言うのに。
肝心な時に言葉もでずに、俺はの顔を見つめることしかできなかった。
それでも彼女は笑った。私は幸せだと。
看守の声はもうすぐそこに聞こえていた。
じきにここへやってきて、俺を引きずりだすだろう。
「イギリス…愛してるわ」
は人差し指を自分の唇に当てると、格子の隙間から指を出して、それを俺の唇にそっと押し当てた。
「…!」
「あなたに会えて本当に良かった」
「別れみたいなこと言うんじゃねぇよ!」
「…さようなら」
は綺麗な微笑を浮かべて扉から離れた。
「!…!」
は俺の呼びかけに答えることなく、また石の床に膝をつき祈りを捧げる。その目に涙はもうない。
いくら名前を呼んでも、がこちらを向くことはもう二度と無かった。
遠くの時計台で鐘が鳴った。
ローズマリーは月光を浴びて。
(本当に私のことを想ってくれるなら、あなたはうーんと幸せでいてね)
20080130
あとがき