それは床に世界地図を広げていた時のこと。

あたしは床に手と膝をついて、地図を覗き込んでいた。

すると隣にイギリスがしゃがんで、同じように地図を覗き込んだ。



「さっきから何してんだよ」

「あー、あのね。あたしのとこ、狭いからさ、広くしたいなーって」



どうにかならないかなって思って。

そう言ってへらっと笑うと、イギリスは呆れたようにため息をついた。



「どっか侵略すればいいじゃねぇか」

「そんなどっかの元ヤンみたいなことしたくありません」

「なっ...」



白目を向いたイギリスを無視して、再び地図へと向かう。

すると無視されたのが気に喰わなかったのか、イギリスは無言で立ち上がると部屋を出て行ってしまった。

あれ...?怒っちゃったかな...

だとしたら相当のガキだなと思いながら、地図を眺める。

後でご機嫌とれば、いいよね?



それにしても...

領地を広げるためにはイギリスの言ったとおり、侵略しかないのかも知れない。

侵略するとしたらどこだろう...やっぱりイタリア?

...だめだ、イタリアの後ろのドイツと日本が怖い。

フランスならいいかも...?あ、やっぱりダメだ。

あんな変態と同棲したくない、絶対。

やっぱり領地拡大なんて無理かも...そう思ったらため息がひとつこぼれた。



「...狭いままで我慢するかぁ。戦争も嫌だし」



誰にともなく呟くと、なんと予想外なことにイギリスが部屋に戻ってきた。

機嫌直ったのかなぁ...(絶対謝るまで拗ねてると思ったのに)



「おかえりー」



声をかけてみたのに。

イギリスはあたしを無視して、地図の前に片膝をついて座った。

そしてポケットからマジックを取り出すと(それ取りにいってたの...?)、自分の領土を線で囲み始めた。



「...何してるの?」

「......」



不機嫌そうな横顔。返事は沈黙。

本当、何してるんですかイギリスさん。

じっと見ても、イギリスは何も言わない(今彼の中では、私はいないことになってるに違いない)

仕方が無いので、最後まで見守ることにした。

そしたらイギリスの目的がわかるだろうし。



部屋にマジックで線を書き込む音だけが響くこと数分。

イギリスは英領すべてを囲み終わった。

囲まれた国は相当な数で、イギリスの強さを物語っていた(友達いないくせになんでこんなに強いのよ)



「...俺の領地は、こんなに広い」



不意に呟くイギリス。

え、何それ自慢?それともケンカ売ってんの?

ムッとして口を開こうとした時、マジックがキュッと音をたててあたしの領地をも囲んだ(え、何してんのアンタ)



「...こうすれば、広い土地に住めるぞ」

「えっ...?」



イギリスがとても不機嫌そうに言ったことは、あたしのまったく予期せぬものだった。

それはつまり、イギリスと一緒に暮らせば、同じ国になるんだからイギリスの土地はあたしのものにもなるわけで。

確かに広い土地に住める。

でもそれって...



「プロポーズ...?」

「べっ別にお前と結婚したいとかそんなんじゃねぇんだからな!これは俺のためであって...!」



いつも通りの彼らしいセリフ。

いつもなら、はいはいと言って流せるセリフ。

でもそれは今、私を不安にさせる。

イギリスは私の領地が欲しいだけなの...?

素直に嬉しかったのに。

勇気を出して覗き込んだ顔は真っ赤だった。

おまけに目が合った瞬間、ものすごい勢いでそっぽを向かれた。

それが何よりも答えを物語っていたので、私の心配はただの気苦労であることがわかった。









未完成な地図の上で
(出来上がったのは幸せの国でした!)






*こちらよりお題をお借りしました。
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