自己満上等ォォォ!!
雨が降っていた。
昼だというのに薄暗く、冷たい風が雨の勢いを煽っている。
うつ伏せに倒れている私の体に満遍なく雨が降り注いだ。
殴られた頭がズキズキと痛み、顔を歪めた。
痛む頭を持ち上げて周りを見まわせば、仲間ばかりが倒れていた。
私が傍に転がっていた銃を支えに起き上がった時、男はこちらに背中を向けて去ろうとしているところだった。
逃がしてはいけない!
最後の力を振り絞って発砲する。
雨のせいで火薬がしけってしまっていないか心配だったが、幸運なことに銃口はちゃんと火を噴いた。
銃声の後、男のすぐ横に積まれた木箱から細い煙が上がった。
男はゆっくりとこちらを振り返り、面白く無さそうに目を細めた。
「逃がさないわよ!アーサー・カークランド!」
叫ぶと痛む頭に響いたが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
仲間の誰かがどこからか「やめろ!逃げろ!」と叫んだが、このまま奴を逃がすわけには行かなかった。
アーサー・カークランドはにぃっと不適な笑みを浮かべると、こちらに歩み寄ってくる。
「まったく大人しく寝てればいいものを…」
「来ないで!撃つわよ!」
再び銃を構えると、アーサー・カークランドは肩をすくめた。
「行くなって言ったり来るなって言ったり、我侭な奴だな」
「ふざけないで!大人しく降参しなさい!」
正直、立っているのだけで精一杯だった。
銃を構えたものの、全身が震える。
側に転がる木の棒を見る。
奴はあの木の棒一本で、銃を持った私たちをいとも簡単に殴り倒した。
しかもこれほどのダメージを食らうとは。
「!よせ、逃げろ!お前一人じゃ無理だ!」
またどこからか声が上がる。さっきと同じ声だ。
その声がアーサー・カークランドに聞こえないはずは無く、奴は辺りを見渡すと、急に方向を変えて歩き出した。
そして倒れているうちの一人を蹴飛ばした。
うぐっといやな声が聞こえると、アーサー・カークランドは満足そうに口端を上げた。
「これで静かになったぜ、?」
「気安く呼ばないで!」
「気の強い女は嫌いじゃねぇよ」
「ふざけるのもいい加減にして!大人しく捕まりなさい!」
銃を持つ腕が震える。マズイ、限界が近い。
それを察したのか、アーサー・カークランドはやれやれと言った風にため息をついた。
「つってもお前、もう立ってるだけでやっとじゃねーか。諦めな」
「お前を捕まえるまでは倒れるものか!」
愛されてんなぁ俺、なんて笑いながらまた近づいてくる。
再び発砲すると、今度は奴の頬を掠めた。
奴の頬に赤く細い線が走り、つーっと血が頬を伝っていく。
「…危ねーなー」
「来ないでって言ったはずよ」
銃を構えたままキッと睨みつけるも、奴は少しも動じずに苦笑しながら袖でぐいっと血を拭った。
「お前気に入った、俺の船に乗らねーか?」
「笑わせないで!私は海兵よ!」
「海兵なんてやめちまえよ、海賊は楽しいぜ。何より自由だ」
また歩みを進めてこちらに近づいてくる。
もうあまり奴と私の間に距離がなくなっていた。
銃を握る手が、雨と汗ですべる。
「来ないでって言ってるでしょう!」
この距離なら確実に当てられる!
私は再度引き金を引いた。
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